HYDE

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I Wish (原田×千鶴)

2011.03.22 Tuesday 16:46
企画「I Wish」

最近は睡眠→起床→睡眠→起床、活動開始という奇妙な生活が続いています
ディシディアなんとかかんとかファイナルファンタジーを買いに行きました!相変わらず
名前が長すぎて覚えられません、はい
ティファのカードが嬉しすぎて、もう…

さて、本題行きまっしょい!
ラルクで原田が書けないとか言っておきながらこのザマです
現代パロでオフィスらぶを目指しました
っても原田と千鶴は恋人同士じゃありません
最近暗いのばっかだったから…甘い話も悪かないんではないかと、ね^^^^
これ何回推敲して書き直してるのにどんどん話だけが無駄に長くなっていってしまいました
やっとこさうpです!

…実はこれで土方編も書いてみたいなと思っていたり思わなかったり


クリスマスっぽいのがいいよねこの曲!
PUNK版がハリクリのカップリングで入ってたけど、どっちもクリスマスシーズンにはおすすめの曲!

作詞 HYDE
作曲 TETSU




「うわあああああ」

なんともなさけない声がオフィスに響く。
オフィス中の全員が一斉にこっちを見るのにも関わらず、千鶴は隅で頭を抱えた。

「どっ、どしたの千鶴ちゃん?」


声を聞きつけたお千ちゃんこと千姫は千鶴と同じ部署で働く同期。
千鶴はギギギギと壊れたロボットのように千姫の方へ向いた。

「うぅ…お、お千ちゃあん」

その顔は涙と鼻水でぐしゃぐしゃになっていた。

「あ、あら千鶴ちゃん…ど、どうかしたの?」

恐る恐る訊ねてみる。正直な話、ここまでの親友の泣き顔を千姫は見たことがなかった。

「うぅ〜…パ、パソコンがフリーズしちゃったっ…!」


それを言った瞬間、オフィスの誰もが千鶴に「ご愁傷様」と心の中で唱えただろう。
千鶴のパソコンは前々からフリーズして調子が悪いと本人も言っていたが、特に修理に出すことはなかった。
一応会社のものなので上司に言えばなんとでもしてもらえただろうに、千鶴は「でも少し経てばまた元通りに復活してくれるから」と言って大して気にはしていなかった。
今、とうとうボロが出てしまったのだろう。千鶴のパソコンはうんともすんとも言わない。
千鶴はまた時間が経てば戻ると考えていたのだろうが、今日はそういう訳にもいかない。
なんせ年末で仕事が膨大にある上に、今日は金曜日のクリスマスイブ。パソコンが戻る時間でさえも惜しいほど、時間というものがない。
今日は全員定時で帰れるという、暗黙の了解がある。
扶養家族がいる者はもちろん、恋人がいるみんなは当然今日というイベントのために必死で仕事を終わらせようと奮闘している。

千鶴も、悲しいことに予定は入っていないが、好きな歌手が今日放送される歌番組のスペシャルに出演するということで必死に仕事を片付けていた。
そして、資料を作っている最中、この事件が起きたというわけだ…。

「はぁ…残業決定だ…」

データはすべてこのパソコンの中で、おまけに保存さえしていない。
最初の頭からやり直し。
これは一体何時間かかるのだろう。

「千鶴ちゃん…私も手伝うわよ!」

千姫が千鶴の肩をポンっと叩くが、もう片方の手には大量のプリントアウトされた資料の山。

「お千ちゃん…ううん!私なら大丈夫!頑張って9時くらいまでには終わらせてみる!」

千姫の優しさに少しだけ救われた千鶴は笑顔でそう言った。

「でも千鶴ちゃん、今日は本当に無理しない方が良いよ?明日は全員休みってことになってるんだし…それにパソコンだって今からじゃどうしようもないじゃない」

「ううん、私、明日は予定とか何にもないから。それに第一倉庫にあるパソコンなら多分起動するから…私、原田係長にお願いして第一倉庫の鍵借りてくるよ」

「そう…?でも無理はしないで、本当にやばいなと思ったら私に言ってね?」

千鶴は千姫にありがとうとお礼を言って席を立った。
向かう先はオフィスの鍵を管理している原田左之助係長のもと。

「あの、すみません…」

原田は自身のデスクではなく、休憩室でコーヒーを飲んでいた。

「お、千鶴か。どうかしたか?」

原田はかっこよく、仕事の効率の良さなどから異性同性構わず人気がある。
だから誰もが下の名前で呼ばれることに嫌気がささない。下心があるように思えない。
そんな不思議な人である。

「実は使っていたパソコンがその…壊れてしまいまして…」

「あー、お前んとこのか!はぁ〜…こんな時にか」

原田が頭に手を置いて深い溜息をつく。

「すすすすすすみません!!私の不注意で…!」

「ん?あぁ、お前に怒ってるわけじゃねぇよ。お前んとこのパソコンもだいぶ古い型のだからなぁ…ったく、さっさと新しいのに変えてやりゃあ良いのに、この会社も変にケチケチするよな」

とりあえず怒られていないことにホッとした千鶴は次なる交渉へと試みる。

「そっ、それでですね…あの、パソコンが使えなくなってしまったので、第一倉庫のものを使わせていただきたいんですけど」

それを言った瞬間、原田の手から空になったコーヒーの缶がポロッと落ちた。
カランという音が休憩室全域に響く。

「お前…正気か?あそこは倉庫だから暖房なんてついてねぇし、プリンターも置いちゃいねぇ。本当に倉庫に保存するデータを記録しておくためだけのものだから、型だってお前が使っていたのよりも古いんだぞ?」

「分かってます!でもあそこなら誰も使っていないし、最低限のメンテナンスはしてますよね?プリンターも小型のなら自分で運べますから!だからお願いです!私に第一倉庫の鍵を貸して下さい!!」

千鶴は食い下がることなく原田に頭を下げた。
それを見た原田はもう一回溜息をした。

「…俺のパソコン使わせてやりてぇのは山々なんだがなぁ。会社命令で自分のパソコンは他の奴に使わせちゃいけねぇことになってるし…しょうがねぇな」

それを聞いた千鶴はパァっと笑顔になって原田を見上げた。

「あっ、ありがとうございます!!それと、残業もしていきたいのですが…」

「はぁ!?残業だ?」

「すすすすすすみません!でも原田さんには迷惑はかけません!!多分残業していくのは私だけなので、私がここの鍵を閉めていきます!!」

「いや、そう言う問題じゃないんだが…お前、今日予定とかないのか?一応クリスマスイブだろ?」

「はぁ…ないですけど?」

千鶴は原田が何を言っているのか分らないというかのように疑問を出した。
それを見た原田は苦虫を噛みつぶしたかのような顔をした。


「まぁ…それじゃあ今からとってくるから、くれぐれも気をつけろよ」

「はい!ありがとうございます!」

とりあえず第一関門突破はできたが、これからが本題である。
最終ボス、仕事の山。
千鶴は今からこれと格闘しなければならないのだ。

(それにしても、何に気をつけるんだろう)

原田が最後に言った言葉の意味を、千鶴は理解していなかった。




――午後11時をまわったころ。
オフィスから人の気配が完全に消えた。
千鶴は未だ倉庫の中で格闘していた。
最初の方はすっごく寒くて手が動かなかったが、今ではだいぶ仕事に集中できて、無心で手が動いている。
千姫を始めとするオフィスのみんなが帰り際にここに寄ってくれて、さまざまな差し入れをくれた。

ある者は電気カイロ。またある者はチョコレート。またまたある者は膝かけ用毛布…
更に「千鶴が見たがっていた歌番組、録画して持ってきてあげる!」というありがたいプレゼントまで。
そんなみんなの優しさに支えられた千鶴はより一層仕事を頑張ろうという気持ちで励んでいた。



そして、とうとう最後のページをプリントアウトする。
ページが間違っていたり、後に誤字脱字を発見して何度もやり直しを重ねた。
その度に用紙が足りなくなって、用紙を取りに行こうと暗いオフィスとここを何往復もした。

ついに、この時が来た。


「―――終わったああぁぁ!!」

クリップで資料の束をまとめあげ、ガッツポーズをする。
今は叫んでも誰もいない。なんともすがすがしい気分である。


「やっと終わったよ…うう、お疲れ自分」

仲間が差し入れた栄養ドリンクを一気に飲み干す。
その空になった栄養ドリンクのボトルをデスクに置く。
コンと乾いた音がした。
コツコツ――


「………?」

千鶴の動きがピタリと止まった。

(え、今なんか音しなかった?)

コン、という音はわかる。千鶴がボトルを置いた音だ。
それじゃあなくて、その次に聞こえたコツコツという音だ。
何者かの足音のように聞こえる。

(まままままままさか…!)

いやいやこのオフィスには誰も残っていない。
警備の人もいないし、いるのは自分一人だけのはずである。

(どどどどど、泥棒さん…!?)

千鶴は慌てて倉庫前の扉に近寄り、耳を澄ませる。

コツコツコツ――


空耳ではない。しかも音はだんだん大きくなっていて、明らかにこちらへ向かってきている。

(ううううううそおおおおお)

ドッドッドッと千鶴の心臓の音も大きくなる。
さあああぁと顔が青ざめていくのが自分でもわかる。
千鶴は急いでその場を離れ、沢山の資料が格納されている本棚と本棚の間へと身を隠した。

(落ち着いて千鶴!えぇっと、こういう時はどうすれば…泥棒の対処の仕方なんて会社のマニュアルには載ってなかったし…あああどうすれば!?)

そうこうしている内に倉庫の扉がガチャリと音をたてて開いた。
誰もいないぶん、その音がよく響いて千鶴は身をビクリと震わせた。
こんなことならもっと音をたてずに気配を消すべきだった!と後悔するが後の祭りである。

(も、もうダメ―――!!)

千鶴は目をぎゅうううっと瞑って覚悟した。






「…おい、千鶴?」


聞こえてきた声は、毎日聞いているものだった。
恐る恐る目を開けて、目の前の人物の顔を見る。


「あ…あれ、原田さん?」

「お前、なにやってんだ?こんなとこで」

そこにいたのは紺色のコートに真っ黒なマフラーを身に付けた原田だった。
白いものがちらほらついている。

「―――っ」

「ち、千鶴!?」

へなへなへな〜〜と千鶴の身体が下へと落ちていく。
床に尻をついたとき、慌てた顔の原田が見えた。

「お、おい!大丈夫か!?熱でもあるんじゃ――」

原田がマフラーを外しながらしゃがんで千鶴の顔に触れて体温を計ろうとした。
ずずり、と鼻水をすする音がして原田が千鶴の様子がおかしいことに気づく。

「――った…」

「?千鶴?」

「よかった…原田さんで……」


千鶴は泣いていた。


「ち、千鶴っ………」

「ご、ごめんなさい私、びっくりしたみたいで――」

失礼しました、と言おうとしたが、それは叶わなかった。
原田の肩で口をふさがれていた。
全身を包んでいるのは原田の腕と理解するのに数秒、抱きしめられていると分かったのに1分くらいかかった。


「悪かったな、泣かせちまって…」

原田の手が優しく千鶴の頭を撫でる。
声を出そうにも出せない状況で、千鶴は何をしていいのか一瞬わからなくなった。
これは許されることなのだろうか、と散々悩んだ挙句、千鶴も原田の広い背中にそっと腕を回した。

「よしよし…千鶴、立てるか?」

やっと原田の腕から解放された時には、真っ青だった顔が真っ赤へ変わっていた時だった。
今が暗くてよかったと千鶴は思う。こんな顔を見られなくて。

原田に腕を引張ってもらい立ち上がると、明かりのついたパソコンへと足を運ぶ。

「お前…終わったのか?」

資料の束を見た原田が言う。

「えっと…はい。ちゃんと自分で見直しもしましたし…。それに、オフィスのみんなが色々差し入れてくれたお陰で無事終わりました」

「差し入れ…?」

原田はデスクの上にあるチョコレート菓子の包みや、栄養ドリンクのボトルを見た。

「はい、皆さん私のことをとっても心配してくれたみたいです」

「…はは…そうか…」

原田は千鶴の頭をポンポンと軽く叩く。
そこで千鶴は頭にポカンと?を出した。

「そういえば…原田さんはなんでここに?」

そう問うと原田は顔を少し赤くしてそっぽを向いた。
こんな原田を千鶴は見たことがなかった。

「…あぁー…なんだ…その、あれだ」

珍しく歯切れの悪い原田。
頭をがしがしと掻く。

「…お前が一人で遅くまで仕事してるって思ったら…家にいてもなんか落ち着かなくてよ。んで、いてもたってもいられなくなってお前の様子見に来たんだ…」

かっこわりいだろ?とそう言った原田の顔はなさけなさそうにしているが、千鶴の頭の中は真っ白になってしまった。

(…え?原田さんが私を心配?え、そんなはずないってあの原田さんが?)

一人パニックに陥る千鶴をよそに原田は続ける。

「他の奴はみんなこうしてお前を心配して差し入れやってんのに俺って奴は…ったく、かっこわりぃよな。手土産の一つもなくてよ。俺、こう見えてお前には何だってしてやりたいと思ってるんだぜ?」

「――いいいいえ、そんなことないです!」


ハッと我にかえる千鶴。

慌てて返事をすると、ふっと笑う原田。
それを見て千鶴はまた顔を赤くした。

二人は倉庫の片づけを終え、戸締りを確認して会社から出る。
外は雪が降っていた。
さっき原田のコートについていたものはこれだったのかと千鶴は納得した。

「すみません原田さん、最後までお付き合いさせてしまって…」

「良いんだよ、気にするな。部下の面倒みるのは上司の勤め…だろ?」

降り積もった雪が歩くたびにサクサクと音を立てた。

「そういえば原田さんは今日用事とかなかったんですか?イブだからてっきり恋人の方と過ごしてるんじゃないかって思ってたんですけど――」

その言葉を聞いて原田はピタッと足を止める。
千鶴は原田の数歩先を歩いて、原田の様子がおかしいことに気づいて止まる。
振り返ると、原田はこちらをじぃっと見つめていた。穴が開きそうなほど。


「…原田さん?どうかしたんですか?」

千鶴は首を傾げた。


「――最近、どうにも気になる奴がいてよ」

頬を赤くして人差し指でそこを掻く原田。
今日は原田の珍しい場面ばかり見ているような気がする。

「今まで女には苦労したことねぇと思ってたんだが…どうにもそいつは今までと違って、簡単に俺になびいてくれなくてな。頑張って気を向けようとしてるんだがうまくいかねぇんだ。俺は好きな奴にならなんだってしてやりたいんだけどよ」

いくら恋愛方面に鈍い千鶴でも、これは流石にそちら方面の話であるというのは気づいた。
――だが、肝心のあることまでには気づくことはなかった。

「はぁ…そのお相手は社内の方なのですか?」

「あぁ、そいつが面白いくらい鈍くってよ…俺がせっかく心配してやってんのにそれに気づきもしねぇでいつも一人で頑張って…ったく、呆れるよ。でも…それでも俺の大切な大切な――部下だ」

その原田の瞳はまるで片思いする純粋無垢な少年のようだ。
男女問わず色んな意味でモテている原田をそこまで悩ませる女性がいるだなんて。
千鶴は頭の中で考える。

(う〜ん…社内で美人といったら君菊さん?あ、でも君菊さんは原田さんと同期だから部下じゃないよね。う〜〜〜ん、お千ちゃん?あ、でもお千ちゃんこの間原田さんに恋愛相談したとか言ってたし…えっとえーっと…)

頭を悩ませていると不意に目の前に影が出来た。先ほどまで2メートルほど離れていた原田がいつの間にかすぐ傍まで居たのだ。千鶴はそれに少しだけびっくりした。

「…千鶴」

原田が屈んで千鶴の目線に顔を持ってくる。急に現れた原田の顔に千鶴は一瞬肩を震わせた。
同時に、寒いはずなのに顔が熱を集めていく。


「〜〜〜〜ええっと!あの!うううう、うまくいくといいですね!!!」

羞恥に耐えかねた千鶴は顔を真っ赤にしてそう叫んだ。


「……そうか…。――千鶴」


原田は少し呆れたかのような顔をしたが、すぐに笑顔に戻った。


「――メリークリスマス」

原田にそう言われ、千鶴はハッとして腕時計を見る。
もう0時を過ぎていた。

クリスマスイブを通り過ぎて、クリスマスがやってきたのだ。


「…メリークリスマス、です。原田さん!」

最悪になるはずだったクリスマスイブが、こんなにも胸温かくなるとは思わなかった。
嬉しさと、なんだかむずかゆい気持ちが胸にこみあげてくる。

「――良かったです。原田さんのお陰で、一人きりの寂しいクリスマスイブにならなくて」

「そうか。俺もだぜ。お前とこうしてイブとクリスマスを過ごせてよ」

そうにっこりという原田。
千鶴は原田の言ったことが理解できなくて、3秒ほど固まる。

「………え?あの、原田さん?」

「ん?なんだ?あぁ、終電がなくなったのか?」

(しゅうでん?しゅうでんって何だっけ…?終電…)


「――ああああああああ!!」

再び頭を抱える千鶴。
その様子に原田はクックックッと喉の奥で笑う。

「そ、そういえば終電…!うわああ12時回ってるってことは…たたた大変!急いで駅にっ!」

そう言って駆け出そうとした瞬間だった。
グイッと逆方向に腕を掴まれ、雪で滑りそうになる。
転がりそうになったところを背中を支えてくれたのは原田だった。

「はははは原田さん!すみません今日は本当にありがとうございました!私終電に間に合わなくなるといけないのでこれで――」

「まぁまぁ、そうつれないことを言うなよ。せっかくのクリスマスなんだから」

頭にたくさんの?をつける千鶴の耳元にそっと唇を寄せる原田。

そしてそうっと囁く。


「――俺んち、来ねぇか?」



「―――――へえええ!?」


がばっと見上げればそこにはまさに狙い通りと書かれている原田の顔が。
千鶴の顔は雪の白さと反面して真っ赤になる。

「それは流石にまずいですよっ!私たち、ただの部下と上司ですし!」

そう言うが原田は構わず千鶴の腕を掴み、駅とは反対の方向へ連れ出す。

「なぁに。部下と上司が二人きりでクリスマス。なんも問題なんてねぇよ」

普通なら誰もが「問題大ありだ!」と言うところなのだろうが、ここは幸い鈍感千鶴だ。
ただただおろおろ慌てているだけである。原田はあと一歩だと内心拳を握る。

「で、でも、原田さんには片思いの女性がいるし…もしその方にこのことを知られてしまったら」

原田の奇麗な形をした眉がピクリの歪む。

彼女の持つ鈍感な心は時として厄介だ。
いや、むしろ厄介に転ぶ方が多いだろう。
ふぅっと溜息をついた原田は前を向いて再び歩き出した。
それを見た千鶴はやっとあきらめがついたのかと安堵して、少し間を置いてから歩き出す。

「――入社したときはまだまだ幼い下っ端だと思ってたんだがな」

「?」

原田が背を向けたまま言う。それが誰に向けている言葉なのか、千鶴は気づかない。


(気づいたらこんなに可愛く見えるもんだったなんてな)


俺はただ、こいつの上司として、単純にこいつの幸せを遠くから眺めているだけで良いと思ってたんだけどな…

こんなに天然だといつか悪い男に引っかかるんじゃないかって、不安になる




そう思ったら、身体はもう別の方向へと動いていた。


千鶴との間にあった距離をぐっと縮めて彼女の両肩に手を置いた。
そうしたらもう後は簡単。
簡単なのに、ずっとこうすることを戸惑っていた。
こいつが悲しむんじゃないかって思ってたから。

――でも、もういい。
決めた、俺がこいつを幸せにする。


少し驚いた表情で原田を見上げる千鶴に、そっと唇を合わせた。




「…は、らださん…?」

永遠に続けばいいと願った時間はあっさりと終わりを迎える。
唇を放すと千鶴は顔を真っ赤にしていた。

「お前のそういう顔を見るのも、もう何回目になるんだろうな」

「へ? わ、私しょっちゅうこんな顔をしてますか!?」

こんな顔というのがどういうものか分かっているのだろうか。
原田は千鶴の頭を撫でる。

「あぁ。まだ入りたてでお前がびっくりするようなミスをしでかした時だな。お前、今みたいな顔で俺に謝りに来たんだぞ」

「そ、そんな昔のっ…って、そんな話より原田さん!」

肩をぐいっと引きよせられ、千鶴の身体はすっぽりと原田の腕に収まった。
千鶴の後頭部に原田の大きな手が回って、原田の胸に顔を埋める形になる。
さっき会社で抱きしめられた時とはまた違った、大人っぽい雰囲気に酔いそうになる。

「本当に、いつからなんだろうな…お前を放っておくことができなくなったってのは。お前は、ずっと俺だけの後ろを付いてきてくれよ…」

今にも泣きそうな原田の声。こんなに辛い声を聞くのは初めてだった。



「……今のは立派な告白だぜ?千鶴」

身体を離されて原田の顔を見ると、そこにはもういつも通りの原田がいた。
ふっと少しだけ微笑んでまた千鶴の前を歩きだす。

「やっぱり一緒ってのは耐えられそうにねぇかな…タクシー代払ってやるから――」


原田がケータイを取り出したその時、背中に軽い衝撃が走った。
少しだけ原田の身体が前に動く。
ゆっくり振り返ってみると、千鶴の頭が見えた。

腰に捲かれた腕は千鶴のもの。
コート越しに感じる温かな体温も千鶴のもの。






「……後ろじゃ嫌」


周りは雪しかいない静かさの中で、本当に小さな小さな声が聞こえた。

「私はあなたの隣にいたいです……原田さん」


そう言って千鶴は原田の腰に頭をぐりぐりと押しつけた。




「………千鶴、今の言葉、忘れるなよ」


原田が急にぐるりと振り返り、千鶴の身体を持ち上げた。


「きゃああああ!ははははは原田さああん!?」

「おうおう暴れなさんな。大人しく連行されとけ」

「連行って…あの…?」

「もちろん、おれんち☆」

原田のウィンクはまるでいたずらっ子の少年のようだった。
それでいて行動はとても大胆。


「幼いのはどっちですか…まったく」


そんな呟きは、機嫌良く鼻歌を歌う彼に届きそうにない。
それでも、千鶴は今とてつもない幸せを噛みしめるのだった――。


END

聖なる夜に、あなたに幸せを






薄桜鬼 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark |

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