HYDE

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雪の足跡 (斎藤×千鶴)

2011.08.18 Thursday 03:41
雪の足跡
斎藤×千鶴で斎藤ルートED後のお話

季節がだいぶ外れてしまいますね
でも良いんです!

薄桜鬼のキャラって結構季節別でイメージすることができますよね
惇も曲と季節とでどの人の小説にしようかなと決めたりしてます

春は土方、夏は沖田、冬は斎藤
秋は…誰でも良いですね^^
多分ゲームでその人を攻略したときの影響からだと思います

だからさようならには土方を
夏の憂鬱には沖田を
雪の足跡には斎藤を使いました

あ、でも瞳の住人は冬っぽいけど風間にしてるわ…



作詞:HYDE
作曲:KEN






「はあぁぁ……さむっ」


溜息のように大きな息を一つ、空に向かって吐き出した。
それは白くなり、一瞬姿を見せてすぐに消えていった。
ここ斗南の地には例年通りの厳しい冬が訪れていた。
この季節を、まだ数えられる程度しか過ごしていない千鶴にとってはまだまだ慣れそうになかった。

その日、千鶴は両肩を抱きしめ身震いをしながらしっかり雪の積もった森の中を歩いていた。
春になれば山菜がたくさん採れ、野兎が多いここも今ではすっかり白い大地。
もっともそれ程奥深くではなく、里の近くで家からほんの少し離れているだけである。
ここらはよく伐採が行われているため切り株が多い。
今来た道を見渡すこともできるので迷うことは、多分ない。
ある程度まで歩き少し足が草臥れた千鶴は、近くの切り株に積る雪を手で払い、そこにそっと腰を下した。
それはそれは慎重に、そおっとである。

(一さん………)

夫である一がいなくなり、千鶴が一人で過ごすようになってから3日が経った。
寂しくないと言えば嘘になる。
でも一と過ごした今までの日々を想うと、寒かった胸が自然と温まっていく。
まるで彼に抱かれているように。
何度も躓いては別れてしまいそうになった。
新選組に居た時はこんな風に幸せな日々が訪れるなんて思ってもいなかった。
だから、今はこんなにも心がすうっとするのだろう。

そしてもう一つ、千鶴には弱音を吐けない理由があった。


――先日発覚したばかりだが、一との子を授かっていた。


「あなたに一番早く伝えたいのに…なんでいないのですか…」

まだ見ぬお腹の子を撫でながら呟く。
膨らみもないが、最愛の夫がいないせいで余計に子が愛おしく感じる。

「でも、守ってもらうだけじゃだめ。強くならなきゃね、あなたのためにも」

昔のように、いつでも守られているわけにはいかない。
一がいない分、私がしっかりしなくてはいけない。
そう心に強く念じる。

(そうだ、名前はどうしよう)

親は、我が子の名前にかなり悩むと聞いた。
生まれてから決める人もいれば、性別も分らないのに生まれる前から決める人もいる。
後者の場合は息子と娘、それぞれ名前を考えておかなければならない。
そうなると前者の方が楽なのではと思う。
だが、千鶴の場合はその時になって決める自信がない。
きっと何日も何日もかかってしまい、長い間名もなき子になってしまうだろう。
やはり考えるなら今だ。

…といっても実は、娘の名はもう千鶴の中で決めていた。


「女の子だったら初美ちゃんがいいな」

読みは『はつみ」である。
夫の名前にある“はじめ”という字を変えて、また二人の初めての子ということで初。
そして我が子が心から愛おしく可愛いと想うその気持ちから美。
これを合わせて初美。
自分がその名を呼ぶ未来の姿を想像して少し笑う。
一はどう思うだろうか。喜んでくれるだろうか。



さて、問題は男の子だった時。

可愛らしい名前ならいくつでも考え付きそうな千鶴だったが、男の子となると色々問題がある。
親というものは男子たるもの常に立派になってほしいと思い育てる。
名前にもそういった由来のものが多い。
千鶴だって同じだ。名前が人生を左右するわけではないが、名前負けしないよう逞しく育てていきたい。
男の子だったら斎藤家を継ぐ重要な存在になる。

これは千鶴の意気込みだ。
そう、名付けとは、一種の育児に対する親の心を込めるという行為だ。
…と、千鶴は思った。

新選組で志高く戦い抜いてきた一の子だ。
彼の意志を受け継ぐような、立派な男子に育ってほしい。
否、育てていきたい。
…もっとも、一の子だから自然に彼そっくりのようになるような気もするが。


「…なんで、いないんですか。一さん」

彼がいたらこんなに悩まなかっただろう。
一言呟いただけなのに、一気に彼への不満が溢れてきた。
いなくなってから未だ3日。たった3日なのにやはり寂しい気持ちが拭えない。
これから強い母にならなくてはならないのに、こんなところで挫けれない。

「一さん…一さん……寂しいよ………」

涙を零しそうになり咄嗟に瞼を閉じる。

(あぁ、やっぱり私って一さんがいないとだめなのね)

泣いたって一さんがいないことは変わらないのに…



「一さん…愛してます」







「そうか、俺も愛しているぞ。千鶴」




(……………あら?)

背後から聞こえた思いがけぬ返事に目がぱちりと開く。
流れた涙もピタリと止まった。

慌てて目を擦り振り返る。
そこにはたった今、千鶴が愛の告白をした本人が立っていた。


「……………あれ、一さん?」

「…それ以外に何に見える?」

「え!?い、いえ!!一さんです!!」

意味のわからない言葉を叫んで慌てて立ち上がる。
一は千鶴に駆け寄るとがばりとその体を両手で抱きしめた。


「うわ、一さん!?」

突然のことに驚く千鶴だが、一の拘束により手も足も出ない。
一は抵抗させまいとぎゅうっと千鶴を抱きしめている。

「あの、一さんはあと2日程お仕事で戻らないんじゃ…?」

何故ここに一がいるのか理解できない千鶴は純粋にその疑問をぶつけた。
本人は少し沈黙をしたが、訳を話してくれた。

「……さっさと終わらせて来たんだ。当初は余裕を持って期間を長くしていたんだが、やはり俺はまだ出来た人間ではないらしい。一人で過ごすお前の姿を想像したら一刻も早く家に帰りたくなったんだ。だから仕事は早く終わらせた」

口籠ってはいるが、つまり一は心配して戻ってきてくれた、ということだろう。

「――それより、だ」

急に一の口調が強気になり、身体を離されて両肩をがっしりと掴まれる。
怒っているようにも、少し見える。
千鶴は寒いはずなのに何故か汗が滲みだした。


「千鶴、何故俺に黙っていたんだ?」

一の鋭い視線が千鶴に突き刺さる。
千鶴はというと、口を半開きにしてぽかーんとしている。
なんとも情けない顔を晒した後、事の状況を掴みとった。


「………えぇぇ!?一さん、なんで知ってるんですか!?」

「急いで家に帰ったらお前はいない。心配して近所を探し回り聞き込みをしていたら医者に言われたんだ!最初はおめでとうおめでとういや目出度いなと言われるから何のことか分からずに尋ねたらお前が妊娠したと…!」


こんなにあからさまな怒りを表している一は久しぶり…というか、千鶴に向けてここまで怒るのは初めてな気がした。
嬉しいような、悲しいような。
でも一が帰ってきたのだからやはり嬉しいのだろう。


「…一さんが出ていった日に、お医者様のところへ行ったのです。そうしたら、その、言われて…。一さんには帰ってきたら言おうと思ってたのに……」
(もう既にご存じだったんですね…)

千鶴はしゅんと項垂れた。
自分から一に言いたくてたまらなかったのに、それをとられてしまったようだ。
千鶴の残念そうな顔を見て一も己の態度を少し改まる。

「と、とにかく。ここは寒いし、お前の身体にもお腹の子にも辛かろう。早くうちに帰るぞ」

一はさり気無く千鶴の肩を抱いて歩きだした。
早く帰ると言ったのに妻を気遣ってか、その足はとてもゆっくりとしていた。
それを感じ取った千鶴は再び嬉しくなる。


しゃく、しゃく

二人の足音はその場に響いていた。


「あ………」

千鶴の足がぴたりと止まる。


「どうした?」

千鶴は不思議そうな顔をして、今来た道を振り返っていた。
つられて一も振り返る。
そこには、降り積もった雪で出来た二人の残した足跡があった。
まるでその場に刻まれたかのように、くっきりとした足跡だった。

(この足跡を…辿るように…)


この道を辿る
歩いた道をゆく…


「……ゆきなり」

千鶴がぽつりと呟く。


「? なんだ?どうかしたのか?」

千鶴はすぐに前を向き、再び歩き出す。
一も千鶴の歩幅に合わせて歩き出す。

「いえ、別に。…ねぇ一さん」

嬉しそうに微笑む千鶴を見れば一も自然と微笑んでいた。



「今日は…少しだけ、ゆっくり帰りましょう」

「…あぁ、そうだな」



真っ白な雪が降り始める。

雪の道を、しっかり踏みしめ歩く。



雪の道を歩くように、人生という名の道をしっかり踏みしめ、
この人の足跡を辿るように生きてゆきなさい
そう、志を高く持った誠の男に成るように…


あなたの名は、行成



END
雪に刻まれた足跡は、二人にとって大切な思い出となる



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